7月8日から13日まで、ウィーンへ行く。
目的は、ただひとつ Leichtfried(ライヒットフリード)社の Loden Cloth(ローデンクロス)を現地で感じるためだ。
私は、ローデンクロスという生地が大好きだ。
このBlogでも8年前に取り上げている。
20代前半のときに触れたローデンクロスの感触が忘れられなかった。
この生地を使って洋服をつくりたいとずっと想っていた。
2016年の9月に会社員を辞めて独立し、私は国内のコンバーターにローデンクロスの取り扱いがないか聴いてまわった。
しかし、諸事情により日本では生地での輸入がされていないことを知った。
そこで学生の時からお世話になっている銀座サワモトに向かった。2017年の1月だった。
代表の澤本さんは、実際にオーストリアへ足を運び商談を重ね、1年と半年が経った2018年の7月、遂に日本でのローデンクロスの取り扱いが始まった。
私はローデンクロスで服を仕立てた。
そして、ようやく自分の足で、オーストリアへ向かう。
ライヒッドフリードの工場を自分の目でみることができる。
ライヒットフリード社は、ウィーンから約3時間。
広大な緑が広がるツェルトベクという町にある。
私は、ローデンクロスで服を仕立てるとき、独自の加工を施す。
いわゆる 縮絨(しゅくじゅう) といわれる加工だ。
簡単に言えば、熱と摩擦を加えて生地を縮ませる。
ライヒットフリード社のローデンクロスは、特殊な縮絨加工で生地巾が1/3になるまで縮める。ここまで縮める技術は他の機屋ではみられない。
極限まで密度を詰めることで、水を弾き風を防ぐのだ。
そんな生地を、私はさらに独自の方法で縮絨する。
私には目指す風合いがある。
旧き衣服から受けとった " 感動 " を具現化するためには必要な作業だ。
長谷川縮絨前のローデンクロス
縮絨直後の様子
天日干しで自然乾燥する
完全乾燥後に、アイロン/ブラシで仕上げて完成
私の縮絨で、更に5%縮ませる。
この「5%」が重要だ。この数字を超えることで初めて可能になる縫製方法「前突き」がある。
しかし、縮ませ過ぎるとフェルトのような風合いになりローデンクロス特有の艶感が消えてしまう。
機屋と私でトータル40%弱も縮めるわけだから慎重に行う必要がある。
その塩梅は私の手が覚えている。
私は、この状態がローデンクロスのベストだと思っている。
私が触れてきた旧き衣服たちから教わった感触だ。
ライヒットフリード社にて、さまざまなことを吸収したい。
そして、ローデンクロスを愛する日本人のひとりとして、ありがとうを伝えたい。
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