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半・分解展のパターン販売について想うこと

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2018年5月から半・分解展では「パターン」の販売を始めました。

この1年間で売れたパターン数は100型を超えます。
1年という区切りに、パターン販売を行った所感をまとめます。



〇 どのような思想でパターン販売を決断したのか

私がパターン販売を行うきっかけとなったのは、SNSでの投稿です。
「リアルな軍服つくりたいから、半・分解展のパターン売ってくれないかな?」
という投稿を見て、「もしかしたら需要があるのかも?」とパターンの販売について考えるようになりました。

その需要に対して、どのような思想で販売を行うか。
そこに大いに悩み、時間を費やしました。


結果的には、「本当に必要な人にのみ届ける」「自分が幸せになる世界をつくる」という2点に重点を置き、
「一律15,000円」「実寸大の紙のみで販売」「1年のうち2~3ヶ月のみ営業」「web販売は銀行振り込みのみ」というスタイルで販売を始めました。



・本当に必要な人にのみ届ける

この考えはパターン販売のみならず、半・分解展も同じ思想で行っています。
私がする表現は、マスに向けて行っておりません。
100人全員にそれなりに届くよりも、100人の中に1人いる熱狂的な人に刺さる表現をしています。むしろ、それしか私には出来ません。

半・分解展のパターンは、現代の美意識※から捉えると、非常に歪な設計になっています。
デザインが派手とか、シルエットが独特とか、そういった視点ではなく、大きく捉えたときに浮かんでくる構成の点です。土台となるもの、背骨となるものが、現代とは全く違うのです。
(※例えば、学校で教わる服づくり)

つまり、扱いが非常に難しいものです。

このようなものを購入する人は、大抵の場合「熱狂的な人」です。
知的好奇心や創作意欲に溢れるクリエイティブな人なのです。

すると自ずと、「一律15,000円」「実寸大の紙のみで販売」「1年のうち2~3ヶ月のみ営業」「web販売は銀行振込のみ」というスタイルが定まってきました。


一律15,000円 → 一般的なパターン販売の相場は数百円~数千円、熱狂的な人のみが買う値段設定、私自身が技術の安売りをしない。

実寸大の紙のみで販売 → 買った人が自分の目で実寸の線を確かめる、使用する場合は自分の手でトレースする必要がある、手作業を通じて美しい線と対話してもらう。

1年のうち2~3ヶ月のみ営業 → 扱いが難しいものだからこそ希少性を高める、まとめて生産出荷できる流れをつくる

web販売は銀行振込のみ → 相手に対して本当に必要なのか今一度確かめる時間を与える、中途半端な人には売らない



・自分が幸せになる世界をつくる

パターン販売は、クリエイティブな人の知的好奇心や創作意欲に応える以上に、私自身が幸せになる世界をつくっていると言えます。

私には、つい目で追ってしまう人がいます。
地の目が逃げたAラインコートをなびかせ颯爽と歩く人、三角面のある袖が付いたジャケットを着て吊り革に掴まり揺れる人。
動きと服とが調和している人たちです。

服が溢れた現代に、服をつくる技術職の私は、ありふれた服を見て、幸せな気持ちになることはありません。

ただ、動きと服とが調和した人を街で見かけると、良いなと思います。幸せな気持ちになります。声を掛けたくなります。


パターン販売は、そんな世界を確かにつくってくれています。
小さな小さな世界ですが、果てなく深い世界です。


私はパターン販売を続けていきます。
熱狂的な人たちの知的好奇心に応えるために
少しだけ幸せな世界をつくるために





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