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彫刻2.0

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「 私は " こう見ている " 」

2016年の個展 と 2018年の個展

このふたつの個展の大きな違いは、視点の持ち方にあります。


2016年は「貴方にはどう見えますか?」というメッセージを持って表現したのに対し、
2018年は「私はこう見ている」という強い意志を持って展示を行いました。


私の扱う衣服は、背負う歴史の厚みが故にファッションとしての性質よりも、一種のアートに近い佇まいを放ちます。
すると、見る人によって捉え方が全く変わるのですね。
「絵画のようだ」という人もいれば「骨董品だ」という人もいる。
見る人の生き様を映す鏡のように、その衣服たちは人々を裸にさせます。


だからこそ私は「貴方にはどう見えるのか?」「貴方がどのように捉えるのか?」に興味がありました。

しかし、問いかけから始まる対話に、本音が顔を出すことは少なかったと実感しました。

私が常に意識するのは「誠実に自分の言葉で話すこと」です。
そして同時に、自分の言葉で話す人に私は惹かれます。


大きく舵を切り、
2018年は「私はこう見ている」という表現を徹底しました。
まずは自分の言葉で伝え、その上で貴方にはどう見えるか?問いかけたのです。

怖くて、不安で、孤独な挑戦でしたが、返ってきたものの大きさに、私は消化不良を起こしています。
それくらい新鮮な言葉をいただきました。


「着用できる彫刻」


半・分解展の試着サンプルをこのように捉える方もいました。

その方は「着用する人がいない外側としての存在に主体性を強く感じ、その作品がサンプルという最小限の構成で、鑑賞するだけでなく着用できる理想的な機会だった」と言います。
そして、更には「その造形美を鑑賞体感したい」と、パターンの購入と試着サンプルのオーダーまでいただきました。

納品した「Red Book」の試着サンプル

試着サンプルの販売は、パターン販売の " おまけ " としてやってみただけでした。

コスプレ衣装の為にパターンを欲する人がいるならば「パターンを買ったついでに、トワル用として試着サンプルを買う人もいるのでは??」という思い付きです。

結果としては、私が想像もしなかった「着用できる彫刻」という捉え方で、価値を見出した方がいたのです。

「自分の決める価値なんて、これっぽっちも関係ないんだ」という前回の投稿の続きは、これでお終いです。

まずは、やってみる。
すると想像もしない反応が返ってくるのですね。


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こぼれ話。

試着サンプルをオーダーしてくれたYさんとは個展会場で話したので、顔を覚えておりました。
後日、Yさんからオーダーを頂いたときは「ふむふむ。パターンと試着サンプルを購入するということは、Yさんはアパレル業界の人なんだな。デザイナーさんかな?」と勝手に妄想。

YさんはInstagramに#半分解展を投稿してくれていたので、私の鬼エゴサで発見。
早速Yさんの投稿をみると、どうもアパレル業界の人では無さそうだ・・・
そこで、改めて連絡をとってみると上に書いたような内容。
ドイツ人作家のヨーゼフ・ボイス氏の作品などについても教えてもらいました。

これは、ただの試着サンプルをつくるのでは衣服標本家の名が廃ると思い(謎の使命感)Yさんと相談のうえ、ポケット完備・袖裏完備。裁断前にホツレ防止の為に縮絨をかけ、衿はアイロン操作の後掛け。で納品したのでした。

コオロギの鳴き声が聴こえてきたら、たくさんたくさん着て欲しい。


Yさん、ありがとうございました!

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