さて、前回のNO.11後半デス。
まずは衿に注目してみましょう。
まずは羽衿(表衿)。
背中心でハギが入っているのが確認できます。地の目は左右共に正バイアス。
このハギは用尺を詰める為のモノだと思われます。バイアスだし、出来るだけで詰めたいデスヨネ。わかります。
続いて地衿です。
地衿には3つのハギが入っており、計5つのパーツから構成されています。
ハギは背中心にひとつと、背中心から5センチずつ離れた左右に確認できます。
地の目は全て正バイアス。
このハギは表衿に見られた"用尺を詰める"という目的とは違った意味でとられたものデス。
是は、いわゆる「月腰」と呼ばれる衿の展開線の展開線です。月腰とは?
このテの地衿はフランスモノにはよく見られます。
通常、月腰は返り線に沿って衿を横一線、上下2分割にするのですが、古着(特にヨーロッパモノ)は縦一線、左右5分割とかにしているのを良く見ます。
本当に生地を余すことなく使いたいならば、5分割にした方が良いですヨネ。縫うのが面倒だケド。
現代では表衿が縦地の月腰、地衿がバイアス1枚取りナンテノガ主流ではないでしょうか?
メンズの安いスーツは大概ソレですよね。まあ、イロイロありますが。
そして、ジグザグに走るステッチ。是はもう定番ですね。
衿をシッカリ立たせる為。フラシ芯を止める為。八刺しが簡略化されたモノ。とかとか・・・
どれも間違いでは無いと思います。
コレもいろんなステッチがありますね。
今まで私が見た地衿のステッチで1番おもしろかったのは、1880年代くらいのインバネスコートに走っていた卍型のステッチです。3センチ20針、60番手くらいで卍のように走っていました。
アレは感動しました。
中を覗いてみると、出てきました。
ジュート芯(麻芯)です。しかもPINK色。!見えないところにオシャレし過ぎデス。!!
こちらもバイアスで背中心にハギがあります。
更に良く見ると、出来上がりでカットされています。
少しでも薄く仕上げたかったのでしょう。
正にテーラーの美意識ですね。素晴らしいデス。
français万歳!LOVE
ついでにGAME POCKET(ゲームポケット)も見てみましょう。
この口の部分なんて、ダック生地が何十にも重なり縫いづらいと思うのですが、ウマク縫っています。
大体のゲームポケットは左右が貫通しています。背中一面全てがポケットです。
向こう側が見えるデショ?
この「背中のポケット」にもイロイロ種類があり、ゲームポケットをはじめ、マップポケットやサイクルポケットなどが有名どころです。ゲームポケットもアメリカとフランスでは形が全く違います。
この「背中のポケット」も今後、種類別にまとめたいと思っています。
でも、背中のポケットの歴史や意味をUPして誰が得をするんでしょうね・・・
それでは、裏からゲームポケットを見てみましょう。
↓
これまた定番でして、フランスのハンティングジャケットのゲームポケットには必ずマチが取られています。下側が縫われていないのです。
フランスモノでこのマチ無しをまだ見たことがありません。
このマチがあることで物を入れても表地にひびかないのです。
勿論、容量を増やすと云う意味もありますが、ソコはテーラーの国フランス。美意識が高いです。
狩猟は元はといえば貴族のお遊び。見た目の美しさを重視した結果がこのデティールに表れています。
各国の古いアドを見てもソレが伺えます。
歴史や文化を知ると洋服がとても面白いです。
運針数はなんと3センチ15針です。細かいですね。
アメリカのハンティングジャケットは10針程度です。
細かく打ったステッチで強度をあげているんですね。運針が細かくなると縫うのにも時間がかかり、量産には不向きです。
そして、このハギの多さ。
本当に々々に生地を大切にしていたのですね。
上から胸ポケットのフラップ裏・腰ポケットのフラップ裏・見返しです。
左右共に見えないところはハギだらけです。オモシロイ。
そして、やっとPIVOT SLEEVE(ピボットスリーブ)です!!!
ドウゾ!!!!!!!!!
まず、こちらが右外袖の表側。
こっちが右内袖の表側。
袖口に注目して下さい。
切り込みを入れ、縫い代を割って薄く仕上げています。!
素晴らしい。
細かいことですが、現代のありふれた洋服でここまで丁寧、拘って、真面目に造っているブランドがどれだけあるでしょうか?
こういった服が100年以上残り、現代の、私のような若い、駆け出しのパタンナーに語りかけてくるコトは大変な価値があります。
有難うございます。服。
(割っているのが素晴らしいと云う事ではありません。)
アームホールの縫い代5ミリって・・・
後から切ったのかな?そうではないとしたら、恐ろしいことです。
"ひねり"もちゃんと入っていますね。
袖山のスレキはこのように挟みこまれていたんデスネ。わあ
袖底のつながりはこのようになります。
このようになります。って云われてもわからないですよね。スイマセン。
私も自分で組んで見るまでわかりませんでした。
表側にして外のラインを繋げてみました。
どうです?この袖付け線。
私は初めて見たとき、ちょっと小踊りしました。(深夜2時)
イラストレーターで簡単になぞってみました。
ホント、テキトーになぞっただけなので参考程度にドウゾ。
私達パタンナーが常日頃、見慣れている袖付け線はこのような線ではないでしょうか?
大体で描いてみました。太線のモノです。
この赤丸の部分がムズかしいんですよね。
ゆとり分量の兼ね合いと腋点の決め方が。
学生時代に色んなPIVOT SLEEVEをたくさん引いて組んでみました。もちろん今も。
立体裁断でやってみたり、衣服解剖学を読んでみたり、ノースフェイス・パタゴニアなどのスポーツショップに通いつめたり(コレはかなり勉強になった)、垣田幸男先生を初めハトホルの先生方の書籍を読み漁ったり、古着分解したり・・・・・
組んでは自転車乗って修正、組んで自転車乗って修正でした。
バイクに乗ってるヤツらもいました。
とても楽しかったなあ。
今はソレをビジネスに変えなければいけません。
企業の一員として働いているのだから。
ムズカシイです。でもホント勉強になります。
とりあえず、これでFrench Hunting Jacket NO.11は終了です。!
残すはNO.12のみ。ヨシッ