梅雨入りした6月初旬。
今年もあと半分。後半戦に突入ですね。
今回の更新は、去る5月、2週にわたり開催された「ato」青山さんのセミナー。そちらのレポートをUPします。
皆さんは、「立体裁断」されていますか。?
学生時代の授業以来やっていない。 と、云う方も多いのではないでしょうか。?
かく云う私も、もっぱら「手書きの平面製図」が主となっています。 衿などは、立体上で見ますが「立体裁断」とまで響きの良いことはしていません。
勤める会社によっても区々で、デザイナーズ系のブランドにいる友人は「基本、立体でつくる」と云う人も少なくありません。 むしろ、平面ではとても引くことの出来ない形だからです。
はたまた大手パタンナーの友人はCADでの製図がメインとなる傾向が強いです。
「パタンナー個人のやり方」と、云うよりは、勤める会社の方向性によっても大きく左右されるのかもしれません。
ところが、「メンズ」と云うカテゴリーになると話は変わってきます。 ことに「メンズジャケット」と云うアイテムの場合、平面製図の割合がグンと上がると思います。
しかし、今回のセミナーは「メンズジャケットの立体裁断」
これは興味深い内容です。
まず、今回のセミナーの概要ですが、以下の通りです。 (以下coromozaから引用)-----------
第1回は「メンズジャケットのボディ(「中身=身体」の感覚について意識)」と題し、
身体の観察からアームホールのゆとりバランス、布と身体との距離感を確認し、
トワルで空間を意識していただきます。
第2回は「袖とボディの関係」と題し、
前回同様、身体の観察から人間の関節、肉付きを意識し、
袖を組み上げます。
またボディと袖の関係をトワルや実際の作品にて体感して頂きます。
---------------(引用ここまで)
なるほど。
空間、体感、感覚・・・「感」のクリエイションが多くありそうです。
さて、立体裁断の説明にいく前に、ひとつ付け足さなければいけない注意事項があります。
それは、「atoのボディ」
立体裁断をする土台となるのがボディです。 世の中には、様々な形をしたボディが存在します。このボディが違えば、自ずと仕上がりも変わってきます。
ことに、atoのボディは特徴的でした。
写真を見るだけでもato独自の感性が伝わるかもしれません。 どうでしょうか。?
肩から大胸筋、そして腹筋まで「肉付け」されています。
とくに背中、肩甲骨付近は大胆に肉が付けられ、身体の縦の厚みがはっきりと表れています。
これは、デザイナーの松本与さんの身体つきを意識した結果だそうです。
ボディへの肉付けもパタンナー自らが行い、年々、足したり引いたりしているそうです。 おもしろい。
この独創的なボディを土台として、メンズジャケットの立体裁断をする。と、念頭に置く必要があります。
この独創的なボディを土台として、メンズジャケットの立体裁断をする。と、念頭に置く必要があります。
それでは、青山さんが説明してくれた「atoのジャケットの特徴」を書いておきます。
参考画像を下記に用意しましたので、合わせてどうぞ。
さて、上の画像を見て、皆さんはatoのスーツをどのように感じますか。?
私のイメージだと、モードであり、シャープなシルエット、エッジの利いたライン。細部からはミニマルな印象も受けます。
実際に、青山さんがatoのジャケットを制作する際に、意識している点を以下の様に説明してくれました。
まず、衿・ラペルに関しては、写真中Aのように、Xの交差するラインを意識しているそうです。
片方の、ラペルのラインが、そのまま対のフロントカットに「流れ」ていくようなXライン。
片方の、ラペルのラインが、そのまま対のフロントカットに「流れ」ていくようなXライン。
そして、その一環の流れの中で「角」を付け、メリハリを与えています。 例えば、衿。
上記画像では解り辛いですが、SNPの後側。ちょうど、首から離れがちな箇所です。
大抵の場合メンズでは、そこを首に沿わせる努力をするのですが、あえて「角」をつくるそうです。
大抵の場合メンズでは、そこを首に沿わせる努力をするのですが、あえて「角」をつくるそうです。
これはatoの美意識として、そう見せるそうです。
寝かせば角をつくりつつ、衿を起こせば首に沿って立ち上がる。 と云うのが理想の衿だそうです。
以前、私が紹介した理想の衿も立ちあっがた時の表情が重要になります。
「丸み」ではなく「多面」での表現。 直線的なライン構成。
などがポイントになってきます。
一例として、Bのラインに注目してみます。
ウエストからAHまでの繋がりが、直線的に見える様に表現されています。
この「面を使った視覚表現」が私には無い感性でした。 atoのスーツには随所にこのテクニックが見られます。
「袖」などはその真骨頂です。
形は、2枚の布から成る、所謂「2枚袖」 この2枚袖で、3つの面をつくりシャープな袖を実現させていました。
この作業は、完全に立体上で行われ、袖のピン打ちには、目を見張るモノがありました。
腕を丸く包み込む袖。 その袖に意図的に前面・側面・後面を面取りし、キレ味のある細身の袖を表現すると云うテクニックです。
これと似た様なカッティングをVintageのジョッパーズパンツで見たことがあります。 色々と応用が利きそうなテクニックでした。
などがポイントになってきます。
一例として、Bのラインに注目してみます。
ウエストからAHまでの繋がりが、直線的に見える様に表現されています。
この「面を使った視覚表現」が私には無い感性でした。 atoのスーツには随所にこのテクニックが見られます。
「袖」などはその真骨頂です。
形は、2枚の布から成る、所謂「2枚袖」 この2枚袖で、3つの面をつくりシャープな袖を実現させていました。
この作業は、完全に立体上で行われ、袖のピン打ちには、目を見張るモノがありました。
腕を丸く包み込む袖。 その袖に意図的に前面・側面・後面を面取りし、キレ味のある細身の袖を表現すると云うテクニックです。
これと似た様なカッティングをVintageのジョッパーズパンツで見たことがあります。 色々と応用が利きそうなテクニックでした。
青山さん曰く、ジャケットをつくる際に意識することは 「オトコモノよりは柔らかく、オンナモノよりはシャープに、まろやかになり過ぎない様に・・・」 との事。
その様な意識からなのか、何となくジェンダーレスな世界観も感じさせます。
1日目は、自然な風合いの緩やかなコットンワンピース姿。
変わって2日目が、全身黒でまとめ、トップスをタックインにスタッズベルト。
多彩なコーディネイトする青山さんを見ていると、パタンナーの個性が、つくる服に投影されいると思います。
(ボーダーTはアシスタントの松島さん。母校のOBでした)
そして、今回のセミナーでは、atoのサンプルを各サイズご用意していただき、試着して感じることも出来ました。 実演して頂き、実物も用意して頂けるなんて、非常に有難いです。
実は、この日もっとも面白い発見をしたのは、試着の時でした。
今回の立体裁断は「タイトフィット」の設定で行われました。
セミナー序盤から、タイトフィットと云えども、決定的に「ゆとり分量」の感覚に、大きな差異を抱いていました。
背中のダキ分、細腹の離れ方、AHの形状等々・・・
結果を云えば、サンプルを試着したところ、2サイズ程の感覚差がありました。
余談ですが、私は46が(タイトフィット目の)ジャストフィット。欲を云えば48で、ウエスト詰め等を行いジャストまで持っていくのがベストです。
しかし、ショップ店員さんに勧められるのは、多くの場合44です。44で肩が合った験しがありません。が、44を押されます。
*この辺りの「市場におけるフィッティングの違い」については、自分の足で稼いだ研究結果があるので、今後まとめたいです。 非常におもしろい結果となりました。
そして、atoのジャケットでは「50」で調度良い塩梅に感じられました。
この日、用意されていたサンプルは、全てストレッチ素材でつくらたモノでしたので「ストレッチ専用」の型紙なのかと、本当に思い、質問までしました。 答えはNOでした。
この様なフィッティングの感覚差は、各ブランド様々なイメージがあるので、良し悪しを付けるものではありません。 ブランドの大切な個性です。
本当に面白い発見があったのは、この後です。
その日、会場には「メンズパタンナー」の友人・先輩が数名おり、私を含めメンズパタンナーの皆さんは、上に書いたことと同じような感覚を抱かれたようでした。
ところが、同席していた「ウィメンズパタンナー」の上司(男性)は、全く別の感想でした。 私がフィッティング(機能性)に赴きを置くのに対し、上司はラインの美しさを重要視されいました。
第三者が作ったアイテムに対し、双方から意見を出し合う機会が少なかったので、今回のセミナーでは、お互いの審美・着眼点の違いを、まじまじと感じられる良い機会となりました。
青山さんをはじめ、atoの皆様、貴重なセミナーありがとう御座いました。とても興味深い内容でした。
さて、今回、会場となったcoromozaの本棚にあったのは、私のバイブル。!中野香織さん著「スーツの神話」!!
私のは、もうボロボロなので新しいのを購入しようと思っていたのですが、もう絶版なのです・・・
残念。
coromozaと云えば、先日1周年を向かえ、繊研新聞をはじめ様々なメディアで取り上げられています。2年目の更なる邁進が楽しみです。
今回のセミナーも非常にcoromozaらしい「若手」に向けた、暖か味のあるプレゼンテーションでした。
代表の西田さんが「どんどん皆さん前に来て、どんどん写真を撮って下さい。質問があれば、どんどん聞いて下さいね」と、優しい口調で進行役を務めて下さったのが印象的でした。
私は西田さんの優しさにいつも「ホッ」とします。
これからも興味深いセミナーをよろしくお願いします。