2013/05/18

encore1

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高円寺のencoreから依頼された仕事の紹介を。  encoreについては以前にもチラッと紹介しています。


今回は、この古着の「型抜き」をまとめてみます。



いきなり型紙に移る前に、まずは写真をいくつか見てみましょう。
さて、この1着。 なかなか珍しい古着です。






フランスの定番古着、例えば「French Moleskin」で画像検索をしてみるとHitするワークウェアがあります。

今回のこの古着は、そのFrench Moleskinの影響を少なからず受けた印象です。




パッと見の印象はFrench Moleskinを感じさせますが、1歩、2歩と近づいてみれば、全く違う古着だと気がつきます。

縫製及び縫製仕様。型紙のライン。付属・芯地使い等々・・・フレンチモールスキンとは全く異なります。
また、年代は1960年代、もしかしたら70年代までいくかもしれません。光沢のあるスパン系の糸が使われ、芯は不織布のようなものになっており、トータルで考えるとそのくらいの年代に感じます。
しかも、工場縫いではなく「家庭縫い」です。


ウエストにメリハリのあるラインで、もしかするとレディースかな?とも思います。打ち合いは左前ですが、背中心は右高です。悩ましい。
また、各所の寸法をとってみると、まるでモデル体型のような数字になりました。
型紙のラインと寸法設定が相まってか、人が着用すると下記画像のような問題が出てきます。


マネキンに着せると、それとなくハマってしまうのですが、人間が着ると肩・首・背中にこの様な「シワ」がでてきます。
この古着にある、いくつかある問題点の中でも1番厄介なのが、このシワでしょうか。


若干の問題はあるものの、本家French Moleskinには無い独特の雰囲気があります。
まして古着には、問題だと思っていたその事柄が、その古着を構成するキャラクターだったと云うことが数多くあります。
難しいところです。

さて、
それでは「型抜き」をしていこうと思います。
必要なものは、製図道具一式・ICテープ(赤とか青のテープ)・目打ち くらいです。欲を云えば、コピー機があると楽です。

型抜きは「囲み製図」と云う製図法を応用して行います。難しいことではありません。
最初に四角形を描いて、その中をパズルみたいに埋めていく推理ゲームみたいなものです。 楽しいですよ。


まずは、洋服のBC(背中心)・BL(バストライン)・FC(前中心)をとっていきます。型抜きは地の目が "全て" です。
1番初めにこの基礎線を丁寧に取れさえすれば、後が楽です。
ストライプやチェック柄だとこの工程が非常に簡単です。しかし、古着には地の目が曲がっているものが多くあるので注意して下さい。
「地の目が全て」と云いましたが、地の目だけに捕らわれると失敗します。

この古着はBCに縫い目があったので、まず、その縫い目にテープを貼りました。
そして、丁寧に「横地の目」をとり、BLを決めました。 ※BLはAH(アームホール)の下を通る横地の目を追いましょう。

すると、写真の様な十字の線が出来上がります。


それでは、左半身を製図していきます。(手書きが薄かったのでPCで線をなぞっています)
上記画像では、BCとBLしか書き込んでいませんが、この時点でFCをとって描いてしまっても構いません。すると、この古着の横幅が固定されます。
更に、BCのBNP(バックネックポイント)と裾に直角の線を引けば、縦幅も固定されます。
これで基本の四角形が完成です。

画像に肝心の四角形を書いてなくて、すいません。 慣れるまでは、はじめに四角で囲んだ方が良いと思います。


ここからが、パズルみたいに中を埋めていく推理ゲームの始まりです。

まずは、後のネック界隈から攻めてみます。


とりあえず、ネックの縫い目と肩の縫い目にテープを貼ってみました。その交点をNP(ネックポイント)と仮定しておきます。

そのNPから垂直にテープを貼り、BNPから水平にテープを貼りました。
これで、後の衿ミツや高さが分かります。


目安となるテープを増やして見ました。

肩線の先っちょ(SP・ショルダーポイント)からBLに平行に水平線を。
鎌深を半分にしたポイントからBLに平行に水平線を。
AHの縫い目にもテープを貼っておきます。

立体(3次元)の洋服がどんどん平面(2次元)に見えてきます。この逆も然り。


大体、こんな感じにとれました。
AHのカーブが上手く描けないな。と思う方は、目安の線を増やしてみると良いと思います。


これで後身頃の上側は大体描けました。 「アッ」という間です。 
続けて下側に進みます。


テープを下まで延長してきました。
脇の縫い目にもテープを貼りました。ついで、W(ウエスト)の位置にもBL線から平行に水平線をとりました。
Wの位置は目測で一番くびれているところに設定しました。

ここで、注意点が2つあります。

1、縫い縮み  
2、BCの振込み  
です。

では、1の縫い縮みからみてみます。


上記画像を見ていただくと、裾線が湾曲しています。

さてこれ、本当にこのラインを信じても良いのでしょうか?
製図と同時に縫製もやっている方(それもカジュアルなら尚更)は気にすると思いますが、これは「縫い縮み」の影響かと思います。

ただ、一概に縫製のせいだとは限りません。洗濯縮みや長年着込まれた服はどうしても寸法が狂ってきます。
しかし、縫製した箇所は特に縮みやすい。と、云うことを製図の際に考慮しなければなりません。

「カジュアルの縫製をやっている方なら尚更」と、上に書きましたが、カジュアルクロージングとスーツクロージングには大きな差があります。
例えば、「地縫い」ひとつとっても、カジュアルだと、わざと太番手で縫製し意図的に縫い目を歪ませたりすることもありますが、スーツのスーパー○○と云われる生地を地縫いする際は、細い針と細い糸で繊細に行われます。

この古着は、スパン系の糸で「地縫い片倒しロック+コバST」 と云う、かなりラフな仕様になっていますが、それでも着丈でこれだけ縮んでいます。
BCだけではなく、その他の縫い目、特にAHの寸法巻き縫い(環縫い)で縫製されている箇所は縫い縮みに要・注意が必要です。想像以上に縮んでいます。
AHが巻きになっているものは生地によりますがAH寸+2cmして良い具合になったりします。


続けて、2のBCの振り込みを見ていきます。



BCに縫い目がある古着の場合は、どれだけ背中が振り込まれているか検討しなければなりません。縫い目がただの直線とは限らないので。
この場合はBCの縫い目以外にタテ地の目をとる事が必要になります。

困ったことに、この古着はタテ地の目が非常に見辛いので、裏返してみました。
裏からみるとタテ地がよく見えました。
BCの縫い目の隣にタテ地をとってみたのが上記画像です。


1と2の注意点を考慮しつつ、後身頃を仕上げてみました。

やはりBCは少しではありますが振り込まれていました。
裾線は湾曲せずにBCに直角に通しました。
仮定とし、このまま進行してみようと思います。


それでは、前身頃に移ります。

と、その前に、 この古着は2面体ですので型抜きが楽ですが、もし3面体2面体2ダーツなどの場合は、細腹や脇ダーツは後回しにして前身頃に進んでしまいましょう。

先に云ったように型抜きはパズルを埋めていくような推理ゲームです。
パズルを埋めるとき、真ん中のピースは後回しになると思います。
型抜きも同じで、最初に四方が固定されるので、解りやすい4辺から攻めていくのが効率が良いと思います。  型抜きのポイントです。


そして、前身頃ですが、型抜きに夢中になってしまい写真を撮り忘れました。 赤テープが既にたくさん貼ってありますが、悪しからず。

まずは、前身頃を抜く際の注意点を挙げておきます。

ずばり、「FCは曲がっている」です。

上記写真の通りです。タテ地の目に対してFCが曲線です。

「FCは直線である」と決め付けてしまうのは危険です。これまでもrrr129で紹介してきた古着たちは、前端が直線になっていようが、FC(前中心)はみんな曲線でした。

何故、曲線になっているかは、過去の投稿に書いたと思います。



さて、そんな曲った前身頃。 赤テープが解りやすい様に番号をふってみました。


衿付け位置があり、NP・SPと1~3の番号が確認出来ると思います。
BLは最初に決めているので、BLに平行に平行にと水平線をとっていきます。FCはボタンホールの涙に決めています。

先に描いた後身頃と同じように、ネック~肩線~AHの順序で進めていきます。
衿付け位置から水平線、NPから垂直線で衿ぐりを。 SPから水平線(画像にはない)で肩線を。 と云う具合で進めれば良いのですが、前身頃は特に目安線を増やした方が正確にとれます。

まずは番号1が胸巾です。胸巾を等分した直角線が番号2。そして、番号3が胸巾からBLに直角に落とした線です。
NPと番号3をつなぐ斜めの線がストラップ寸です。以前にも、このストラップ寸で苦戦したことがありました。私の好きな19世紀中枢から20世紀初頭の型紙はストラップが短いのです。

この様にいくつかの案内線を自分なりに引いて、この古着の寝かし分量や傾斜・体型等々を考察します。


続けて下に流れ、フロントカットや脇の縫い目をとっていきます。

フロントカットは、線を抜く必要もありません。
パターン用紙のBL・FCと、古着に貼った赤線のBL・FCを合わせ、地の目を整えて、なぞってしまえば簡単です。
脇線も同様で、地の目を整え、目打ちで打ってしまった方が、以外に良い線が引けたりします。




トントントンと。


これで、身頃は大体 終了になります。

いよいよ袖です。
袖は、内袖から基点をとっていくのが効率が良いです。 山袖側は平面に置くことが困難なので。

袖を抜くポイントは返り線の位置をキチンと把握すること。が大切だと思います。
縫い目を基点に折ることももちろん可能ですが、返り線で折ったほうがより平面的に見ることが出来ると思います。でもこれは、人それぞれのクセな部分が強いかもしれません。
また、カジュアルモノは返り線イコール縫い目と云うことが当たり前にあるので、惑わされないように注意して下さい。

地の目を自然に優しく整えて、内袖を表に折ることが出来たら、またまた目打ちの登場です。
上記画像の番号2のように、内袖のくりの1番深い(低い)ところを「ブスリ」と刺して下さい。外袖まで貫通するように。! 何度も云いますが、地の目を自然に優しく整えて下さい。

その穴の横地の目を追って結ぶと、袖底の水平線がとれます。すなわち、山の高さが分かります。
早速、赤テープを貼ってみました。

上から2番目の横テープが目打ちで開けた穴を基点に結んだ袖底の水平線です。
縦に長いテープは、SPから袖底の水平線に直角に通した垂直線です。
この2つの線が袖の製図の基本線になるので、あとはまた中を埋めていきます。



例えば、コピーしてパターンにあてがって見るとラインが取りやすいし、イメージも出来ると思います。
コピーする際は、手で地の目を整えることが重要です。


袖山などは、イセの関係などがあり、正確に抜くことは難しいですが、目安の線を増やして拾っていくのが懸命だと思います。
上記画像では、等分・等分し、目安の線を貼っています。立体の服に四角や三角が見えてくると平面的に見やすいかな、と。




最後はスーっと流しましたが、是で身頃・袖は完成です。
写真を撮りながらやったところ2時間半程かかりました。一重の二面体・二枚袖・カジュアルメイドの古着でしたので比較的、簡単に型抜きが出来ました。

今回は、かなり丁寧にやっています。 いつもならば、サササと、ジャケットなら1時間待たず仕上げます。 数をこなせば、慣れてきます。


そして最後に細かいパーツ。
衿や、ポケットなどはコピーで抜くことが出来ます。



衿まわりにテープを貼ってBCやNP、返り線などポイントの点をとれば、出来上がりです。
衿を抜く際のポイントは地衿側をコピーすることです。 もちろん地の目にも注意です。
羽衿側だと、返りのゆとり分などがあり、平面的に置くことが難しいのです。


ポケットも同様です。
まわりにテープを貼り、拾います。FC側にはFと書いておきました。


上記画像の通り、古着はラインが歪んでいたりします。このポケットも直線ではなく微妙な曲線になっています。
この微妙な曲線を直線に修正してしまうのか、それとも生かすのかで、上がりの雰囲気が全く変わります。
この些細な歪みひとつが、出来上がったモノに与える、温もりや優しさは絶大だと感じています。私がもっとも大切にしていることです。


手書きで抜いたパターンをPCに取り込みました。
PCの良いところは複数枚の型紙を、一気にひと画面で並べられるところです。


これまで蓄積してきた何十枚の型紙を現実で見比べようと思うと骨が折れますが、PCなら効率良く確認が出来ます。
寝かし方、傾斜、AH、体型、ラインなどなどなど。

この古着のAHはこんな形をしていました。
まず、身幅に対しての鎌深が深すぎるのが気になりました。屈伸した前身頃も気になります。寸法で云えば背幅が辛そうです。


ただでさえ、辛そうなAH・背中につく袖が是です。これでは動けないわけです。


イセはそれなりに入っていました。 が、袖の目は紳士服のソレとは違い、レディースの目に似ています。

衿・ポケットは下記の通りです。 


ミントグリーンの線は、私が補正したモノです。
1stシーチング(試し縫い)は、ひとまずこのラインで縫いました。

既に、encoreでシーチングチェックして頂き、メンズサイズのサンプルを本気縫いすることになりました。素晴らしい生地を頂いたので縫うのが楽しみです。
次回は、チェックして頂いたシーチングの体型補正や縫製仕様について書きたいなと思っています。


今回紹介した「型抜き」は、学生の皆さんに是非やってほしいな。と、思います。
理由は、学校ではNGとされてきた型紙と出会えるからです。

ただ、授業内でシャツ・パンツ・ジャケット・コートなどの基本形を習得してからトライしてみるのが良いかもしれません。 
古着の型紙には「味」がありますが、この味をより深く味わう為には、ある程度の基本を知っていると自分の中で「食べ比べ」が出来るのでうまく消化出来るはずです。

もし時間が有れば、ひとつの洋服とこんな形で向き合ってみるのも楽しいです。
ひとりではなく、チームでやってみるのもオモシロイです。同じ洋服を抜いても不思議なことに皆、違うパターンを描くはずです。笑
始めは、シャツなど簡単なアイテムからやってみるのが良いと思います。




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