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H.KAN

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「長谷川くんのお任せで」


私が収集している古着は、大抵の場合、古着屋で購入したものより、ディーラーやコレクターの方から直接アポが入り、私の手元にやってくることが多いです。

そんな中、稀に「お直し」のアポイントを受けることがあります。
私が仲良くさせて頂いているディーラーの方々は「変態」と辞書を引けば、彼らの名前が挙がる程にどうしようもなく、どうしようもない人達で。。。
相談される「お直し」も身震いするような、とんでもない代物です。

そうして、さらっと云うのですね 「長谷川くんのお任せで」 と。


今回、引き受けたものは、アイテムとしては、そこまで難しいものではなく、お直し内容も「袖丈詰め」と比較的、容易な依頼でした。


しかし、いざ取り掛かってみると、やはり引き込まれるのですね。
当時の丁寧な仕事振りや、現代では廃れてしまったディティールなど。 良き教科書です。

今回のジャケットなどは、その好例です。 もう、このまま分解してしまいたくなりました。


例えば、 IDGの退色に合わせて糸を加工したり、クンニョで前肩をつくり直したり、わざとジュートを噛ましてパッカリングを出したり、経糸撚って刺し子をうち直したり・・・

一般的なお直し屋さんでは出来ない「ヤレ感」や「アタリ感」のような、感覚的な部分を大切にして、修理をしています。


そして最近良く考えるのが、当時の思想や文化です。
これまでは、主に型紙やビジュアル中心の本を読むことが多かったのですが、最近は19世紀の風俗や歴史関係の書物に目を通す機会が多くなりました。

すると、同じ洋服が、また違ったモノの様に見えてくるんですね。 それが新鮮で面白い。。。


そういったキッカケは、やはり中野先生の影響が強くあります。
初セミナーの際、参加者の方から頂いた 「思想と共に考えて見てはどうか」 と云う質問は、いまもぐるぐると頭の中を回っています。

そんなこんなで、袖丈詰め 完成です。
どうです。?素晴らしい古着でしょう。

ちなみ、こちらドイツ ライプツィヒのテーラー「H.KANNEWORE」のダブルブレストです。
推定1920~30年代でしょうか。

こちらの持ち主曰く 「ここまで美しいシルエットに出会ったことがない」 との事。
確かに、その通り。素晴らしいシルエットをしています。
30年代に生まれた黄金比「砂時計」のラインを描いています。


2面体2ダーツですが、特徴的な位置にダーツが流れます。 後身に近い方は、極細の細腹のように見えてしまいますね。

さて、
おまけに推定1930~40年代のドイツのダブルブレストも紹介します。

こちらは、後輩の私物でして、フランス旅行の際に蚤の市で購入したそうです。 (勝手に掲載してゴメンね)
釦は樫の木に付け替えていますが、オリジナルで付いていたのは、先のダブルブレストと全く同じ釦だったそうです。
付属も仕様も非常に酷似しており、もしかすると H.KANNEWORE製なのかもしれませんね。

ドイツのスーツは非常に興味深い研究材料です。

下記はカッターアンドテーラーの芯地のトピックで大きく話題になっていたドイツの芯地の構成。




そして、最後にH.KANNEWOREの1906年の広告を。


もしも、大切な古着のお直しで悩んでいる事がありましたら、何なりと私までご用命をば。

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